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東京地方裁判所 平成元年(特わ)319号 判決 1989年9月20日

本店所在地

東京都練馬区田柄四丁目一番二四号

西邦工業株式会社

(右代表者代表取締役 西澤慶祐)

本籍

同都練馬区石神井町一丁目一三七四番地

住居

アメリカ合衆国カリフォルニア州サンマリノ市ゲインズボロウドライブ二七六九番地

会社役員

西澤慶祐

昭和一五年一二月二五日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡辺咲子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人西邦工業株式会社を罰金三二〇〇万円に、被告人西澤慶祐を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人西澤慶祐に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人会社は、東京都練馬区田柄四丁目一番二四号に本店を置き、空気調整及び冷暖房機器の製造販売等を目的とする資本金三二〇〇万円(昭和六〇年六月六日変更前の資本金は四〇〇万円、同六一年六月五日変更前の資本金は八〇〇万円)の株式会社であり、被告人西澤は被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人西澤は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上金額を除外し、仕入金額を水増し計上する等の方法により所得を秘匿した上

第一  昭和五九年四月一日から同六〇年三月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億九一六七万三二七八円あった(別紙1同六〇年三月期の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同六〇年五月三一日、東京都練馬区栄町二三番地所轄練馬税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億五一九万六〇四三円で、これに対する法人税額が四三八七万六三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成元年押第四六五号の1)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額八一三一万三七〇〇円と右申告税額との差額三七四三万七四〇〇円(別紙2同六〇年三月期の脱税額計算書参照)を免れ

第二  昭和六〇年四月一日から同六一年三月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が三億九一三一万九三三八円あった(別紙3同六一年三月期の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同六一年五月二九日、前記練馬税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二億一九万二二一三円で、これに対する法人税額が八四五九万九〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同押号の2)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一億六七三五万六〇〇円と右申告税額との差額八二七五万一六〇〇円(別紙4同六一年三月期の脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人会社代表者兼被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する各供述調書

一  宮澤護、根岸進の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  商品売上調査書

2  商品仕入調査書

3  福利厚生費調査書

4  消耗品費調査書

5  旅費交通費調査書

6  運賃調査書

7  広告宣伝費調査書

8  接待交際費調査書

9  会議費調査書

10  雑費調査書

11  受取利息調査書

12  交際費損金不算入額調査書

一  検察事務官作成の次の各捜査報告書

1  「福利厚生費の金額異動について」と題するもの

2  「雑費の金額異動について」と題するもの

3  「事業税認定損の金額について」と題するもの

4  昭和六三年九月二二日付のもの

一  練馬税務署長作成の「証明書」と題する書面

一  収税官吏作成の領置てん末書

一  登記官作成の商業登記簿謄本

判示第一の事実につき

一  収税官吏作成の外注加工費調査書

一  検察事務官作成の次の各捜査報告書

1  「旅費交通費の金額異動について」と題するもの

2  「広告宣伝費の金額異動について」と題するもの

3  「会議費の金額異動について」と題するもの

一  押収してある昭和六〇年三月期法人税確定申告書一冊(平成元年押第四六五号の1)

判示第二の事実につき

一  根岸進作成の上告書

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  給料手当調査書

2  事務用品費調査書

3  修繕費調査書

4  通信費調査書

5  水道光熱費調査書

6  荷造包装費調査書

7  新聞図書費調査書

8  備品費調査書

9  特許使用料調査書

一  検察事務官作成の次の各捜査報告書

1  「消耗品費の金額異動について」と題するもの

2  「通信費の金額異動について」と題するもの

3  「交際費損金不算入額の金額異動について」と題するもの

一  押収してある昭和六一年三月期法人税確定申告書一冊(同号の2)

(法令の適用)

被告人西澤の判示各所為は法人税法一五九条一項に各該当するので、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で処断し、また、同被告人の判示各所為は被告人会社の業務に関してなされたものであるから、被告人会社に対しては法人税法一六四条一項により判示各罪につき同法一五九条一項の罰金刑を科し、その額についてはいずれも情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪の右罰金の合算額の範囲内で処断すべきところ、本件は、マンション等の換気口のフードの考案開発その販売等で多大な利益を得た被告人会社が、二事業年度にわたり合計一億二〇〇〇万円余りもの巨額な法人税を免れたという事案であり、右脱税のほ脱率も五〇パーセントに近く、その動機も単に不況時等に備えて資金を蓄積しようとしたり、公表できない接待交際費に充てる裏金を捻出しようなどとしたにすぎないもので斟酌すべき点などもとよりなく、犯行態様をみても、被告人西澤が自ら受取手形の一部を除外してこれを仮名銀行口座を利用して取り立てたり、あるいは当時の顧問税理士事務所職員らに指示して経理操作させて所得の秘匿を図るなど悪質であり、被告人会社及びその業務を統括していた被告人西澤の刑責は重いと言わざるを得ないが、他方、被告人会社は既に修正申告の上、本税、重加算税等を納付していること、被告人西澤にはこれまで前科がなく、現在本件の非を深く反省していること、その他本件全証拠から推認される被告人らに有利な諸情状を考慮し、被告人会社を罰金三二〇〇万円に、被告人西澤を懲役一年にそれぞれ処し、同被告人に対しては同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判所裁判官 反町宏 裁判官 髙麗邦彦 裁判官 山田明)

別紙1

修正損益計算書

昭和60年3月期

西邦工業株式会社

自 昭和59年4月1日

至 昭和60年3月31日

<省略>

別紙2

脱税額計算書

昭和60年3期

自 昭和59年4月1日

至 昭和60年3月31日

<省略>

*租税特別法関係通達42の2-6参照

別紙3

修正損益計算書

昭和61年3月期

西邦工業株式会社

自 昭和60年4月1日

至 昭和61年3月31日

<省略>

別紙4

脱税額計算書

昭和61年3期

自 昭和60年4月1日

至 昭和61年3月31日

<省略>

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